光害の実際−概要
【光害の概要記事はこちら】
光害とは、環境省の『光害対策ガイドライン』では
良好な「光環境」の形成が、人工光の不適切あるいは配慮に欠けた使用や運用、漏れ光によって阻害されている状況、又はそれによる悪影響
と定義されています。管理者は簡単に説明する際には「過剰または不適切に設置された人工照明により、周囲に悪影響が及んでいる状況」と表現します。
具体的には次のような例が挙げられます。
以下、個々について簡単に説明していきます。
エネルギーの浪費
「質の悪い人工照明」すなわち、必要以上に明るい照明、必要ない方向を照らしている照明、必要ない時間に点きっぱなしの照明などは、電気エネルギーの浪費です。
その発電のために使われた貴重な資源が無駄となり、発電・送電過程に伴って排出されたCO2は地球温暖化をますます悪化させます。
もちろん電気代も余計に払うこととなり、公有の照明の場合それは税金でまかなわれています。
人工照明に使われている電気エネルギーのうち、どのくらいの割合が「浪費」となっているかを求めることは簡単ではありませんが、いくつかの研究グループが見積もりを発表しています。
- 国際ダークスカイ協会は2013年11月に、世界全体の屋外照明によるエネルギー浪費等の推計を公表しました。
【屋外照明によるエネルギー浪費の最新の推計が公表されました】
ポイントをまとめると、(1) 世界全体のエネルギー消費のうち、屋外人工照明に使用されている割合は8% (2) そのうち約60〜70%が「浪費」 (3) 浪費分を換算すると、1.1 PWh(ペタワット時)の電力量、500基の発電所出力、775万世帯の使用電力、750Mt(メガトン)のCO2、1100億ドルのコストに相当(年間)
国際ダークスカイ協会による推計(参考文献)
欧州
日本
順次、追加していきます。
生態系への影響
地球に生命が誕生したのは35億年前、生物が陸上に上がったのは4億年前。
以来、24時間のサイクルで明暗が繰り返される環境の中で、生命はゆっくりと進化を遂げてきました。
現在、ほとんど全ての動植物が備えているサーカディアンリズムや、夜行性・昼行性動物の行動パターンを見ると、
その影響が生命にとっていかに根源的なものかがわかります。
人間が作り出した「電球」が、自然界の光環境を大きく改変し始めたのは、わずか130年前。
様々な生き物が、その変化にとまどい、苦しみ、時には生命の危険に晒されています。
渡り鳥
- 渡り鳥は、夜間の渡りの際、月明かりや星明かりを頼りに飛ぶ方角を知ります。高層ビルやサーチライトなど、空まで漏れた明るい人工光があると、その光に惑わされて光源に吸い寄せられ、光源のまわりをグルグルと飛び続けます。やがて力尽きて地面に落下したり、ビルの明るい窓ガラスに衝突したりして、北米では年間数億羽が命を落としていると言われています。
- 当サイト「報道リンク集」にて『渡り鳥』を検索していただくと、関連記事が多数あります。
- 参考サイト: FLAP (Fatal Light Awareness Program)
- 参考動画: 9.11追悼の光に吸い寄せられる渡り鳥
ホタル
- ホタルに対する人工光の影響は、次のサイトに詳細に述べられています。
【ホタル百科事典/ホタルに及ぼす人工照明の影響(光害)とその対策】
ポイントをまとめると、(1) ホタルの複眼は550nm付近をピークに400〜600nmの波長の光に感度がある。 (2) 個体周囲の照度が0.1ルクス以下にならないと発光を始めない。 (3) 人工光は、ホタル同士の光によるコミュニケーションを妨げるほか、幼虫の上陸行動も阻害する。
- 千葉県四街道市では、ヘイケボタルの生息地で個体数が減少した理由の一つとして、
少し離れた場所の住宅地との間にあった樹木が伐採されたことにより、人工光に晒されたことが考えられている。
(参考文献)
ホタル生息地から見た住宅地(伐採前)
ホタル生息地から見た住宅地(伐採後)
ホタル個体数の変化
(写真、データ提供:四街道自然同好会)
- その他、報道リンク集で「ホタル」を検索していただくと、いくつかの記事があります。
イネ
青色LEDの殺虫効果
- 2014年12月、東北大学の研究グループが、青色LEDの光に殺虫効果があることを発表しました。
【LEDの青色光、昆虫を殺す作用を発見】
ショウジョウバエ・蚊のさなぎ・ヒラタコクヌストモドキのさなぎなどへの作用が確認されたとのこと。
青色光(467nm)のショウジョウバエへの影響(参考文献)
人体への影響
生活・安全性への影響
夜空の明るさへの影響
The world atlas of artificial night sky brightness 2016
- イタリアのFabio Falchiらの研究グループは、最新の衛星画像と天空輝度測定値から計算した「夜空の明るさ世界マップ(光害マップ)」を2016年6月に発表しました。
- 彼らの結果によると、世界人口の80%以上、欧米人口の99%以上が、人工光の影響で明るくなった夜空の下で生活しています。また、普段暮らしている場所で天の川が見られないのは、世界人口の3分の1以上、欧州人の60%、北米人の80%近くに達します。
- 【こちらに彼らの論文の結果をまとめました】
大気汚染の助長